『エンタミナ5』公式レポート
セミナーイベント『エンタミナ5』が1月20日(土)、秋葉原UDXシアターにて開催されました。イベント名のエンタミナは、「エンターテインメント」と「セミナー」をかけ合わせた造語。今回のレポートでは、業界最前線で活躍するプロフェッショナルたちの独創的なアプローチによるプレゼンテーションを、会場づくりの様子からお届けします。
エンタミナの会場づくりは午前中から始まります。筆者が会場についたのは午前9時半。その時点ですでに、デスクトップワークスのメンバーをはじめとしたスタッフによる準備が進行していました。
会場づくりは照明や音響、機材関係の配線、そして参加者の導線確保など多岐にわたります。中でも特にこだわりが感じられたのは、ステージづくり。主催者自らが壇上と客席を行き来して、照明や音響スタッフへの指示を行っていきます。出演者が最高のパフォーマンスをできるように、そして、参加者がストレスなくセミナーを楽しめるように、細部まで入念に進行していきます。
ひと通りの場づくりが終わると、次に出演者を集めてランスルー(リハーサル)が始まります。エンタミナのセッションは出演者それぞれが、さまざまな工夫を凝らした演出をします。それらに合わせたステージの調整はもちろん、出演者それぞれの独自の世界観を存分に表現できるよう、ライブ空間ならではの細やかな調整がされていきます。
開場時刻の12時15分になると、エンタミナ恒例の「時報ムービー」がスタート、来場者は誘導スタッフの手でスムーズに座席へと通されていきます。開始5分前になると、時報ムービーからカウントダウンへ。参加者の期待感、そして緊張感がピークに達した開演時間の13時、オープニングムービーが流れると、いよいよセミナーイベント『エンタミナ5』スタートです。
トップバッターは株式会社ウェブライダーの松尾茂起さん。松尾さんのセッションテーマは、前回のエンタミナ4に続いて「反復」。自身の声をその場で録音しループ再生を掛けながら、即興で音楽を演奏していきます。松尾さんのセッションは、これまで彼が培ってきた音楽と言葉の力を活用して、独創的な世界観に参加者を引きこんでいました。「反復」によって「同じこと」を繰り返しつつも、そこに「変化」を加えることで、新たな「感動」を生み出す。まさにエンターテインメントなセッションの中に、そんなメッセージが垣間見れました。
続いてのセッションは、今回がエンタミナ初参戦となる株式会社まぼろしの益子貴寛さん。益子さんのセッションテーマは「27歳のわたしを変えた山本夏彦名言集」。正論・金銭・世間・才能・言葉といったキーワードを切り口に、益子さんの解説を交えながらセッションは進行します。今回、益子さんが紹介した名言の数々は、今も仕事をする上で益子さん自身が心に留めているとのこと。山本夏彦氏の言葉を引用しつつ、「今でもこれらの言葉たちと問答を続けている」と締めくくりました。
続いてのセッションは、デザイナーの長谷川恭久さん。普段はデザイナーとして仕事にまつわる内容のセミナーを行っていますが、今回はエンタミナらしくエンターテインメントな切り口ということで、「アートとして見る映画」をテーマにセッションがスタート。映画は映像美やストーリーをそのまま楽しむこともよいのですが、隠された製作者の意図や文脈を探りながら観ると、より楽しめるとのこと。今回はコーエン兄弟の傑作ブラック・コメディ「ファーゴ」を題材に、長谷川さんならではの視点を交えながらセッションが展開。長谷川さん曰く、「ファーゴ」にはアメリカの理想と現実の間にあるギャップが表現されているそう。長谷川さんの解説により映画に奥行きが感じられ、新たな楽しみを見つけることができました。
続いてのセッションは、CSS Niteでもお馴染みの株式会社スイッチの鷹野雅弘さん。セッション冒頭の「DVDプレーヤーの字幕切り替え」をモチーフにしたアプローチが印象的でした。今回のセッションテーマは「ワークフローをデザインする」。「時短」が叫ばれている昨今において、いかに無駄をなくし、ミスを減らしていくか。鷹野さん曰く、「クリエイティブとは受け手の状況や気持ちをいかに想像できるか」ということであり、それに付随する作業を「いかに工夫し続けることができるか」が大切だといいます。そうして制作フローをデザインしていくことが、ひいては仕事や生活をデザインすることにつながっていくとのこと。鷹野さんの仕事に対する姿勢が感じられるセッションでした。
と、ここでライブイベントならではのアクシデントが。次のセッションは株式会社BITAの中村健太さんの予定だったのですが…どうやらインフルエンザでお休みとのこと。急遽、エンタミナ1~4まで、会場提供をしていただいた株式会社クリーク・アンド・リバー社の篠崎祥子さんによる「協賛企業PRタイム」となりました。
続いてのセッションは、ネットイヤーグループでIA/UXデザイナーとして活躍し、現在は日産自動車株式会社のグローバルデザイン本部にてUX/UIデザイン部に所属している坂本貴史さん。今回、『エンタミナ5』に挑むにあたり、何をしようか悩んでいたところ、むしろその「悩んでいる過程を見てもらおう」という考えに思い至ったとのこと。その思考プロセスを、自身の言葉を交えた映像作品として作り上げていました。坂本さんが今回、思考を巡らせたのは「共感・秩序・不自然・転身・不変・想像と破壊・客観視・初心」という8つのテーマ。最後に、それぞれのテーマに共通したキーワードをつなぎ合わせて「自分初(JIBUNZOME)」という言葉で締めくくりました。
続いてのセッションは、今回がエンタミナ初参戦となる株式会社Rokkakuの森田哲生さん。エンタミナ出演にあたり題材に悩んだ森田さんは、改めて「自分にとってプレゼンとは、セミナーとはなにか」について考えて、そのキーワードとして「例え話」と「話芸」に至ったとのこと。そんな森田さんのセッションは「パワポで落語」。長屋の天井裏をクラウドに例えたことから始まる展開は、通常の落語とは異なり、パワポのスライドを用いてトークアプリ形式で表現される、オリジナリティあふれる演出が印象的なセッションでした。
続いてのセッションは、DCHSの高瀬康次さん。今回のテーマは「カウンターカルチャー=価値観の転換」について。明治維新やヒッピーに代表されるカウンターカルチャーを題材に、自身が立ち上げる新会社「Culture Development」について紹介していただきました。吉田松陰氏をモチーフに、幕末の志士たちの高い志(VISION)と人脈(NETWORK)、そして力(SKILL)を手に入れたことで成し遂げられた偉業、それをヒントに高瀬さん自身も現在の社会に維新を起こそうとしています。失敗を恐れずに、好きなことを「とにかく、やってみること」。これからの時代を生きていく指針を教えていただいたセッションになりました。
続いてのセッションは、株式会社アンティー・ファクトリーの中川直樹さん。テーマは「真の価値あるパフォーマンスとは」。中川さんが試行錯誤を繰り返して辿りついた答えを、お釈迦様のエピソードを通してプレゼンしていただきました。その答えは「中道」。お釈迦様は激しい苦行をしても悟りを開けませんでしたが、スジャータという女性の介抱を受け、ゆとりを持って、修行に臨むことで、悟りを開けました。その悟りとは、琵琶の弦は張り詰めすぎても切れてしまい、緩ませすぎても音が歪んでしまう。「中ほどに張る」ことがちょうどいいというというもの。同じように、仕事のパフォーマンスにおいても、張り詰めすぎてもダメ、緩ませすぎてもダメ、適度な緊張感を持って、仕事に臨むことが最高のパフォーマンスだということでした。さらに、そこにチームという概念を加え、ハーモニーを作り出すこと、つまり、個々が最高のパフォーマンスを発揮しチームとして協力しあうことが大切。それが、中川さんが辿り着いた、パフォーマンスにおける「悟り」となりました。仕事への向き合い方として、会社の仲間と共有したいと思える内容でした。
エンタミナのラストを締めくくるのは、イベントの主催である株式会社デスクトップワークスの田口真行さん。今回のセッションテーマは「もしも視点」。これは、田口さん自身が常日頃行っていることで、あらゆることを「もしも自分だったら」と自分ごとに置き換えることで、新しい発見、アイデアへとつなげる思考法。そして、セッションの最後には「参加者さんにも体験していただきましょう」ということで、いち参加者として楽しんでいたエンタミナに「もしもあなたが出演するなら」を考えるワークショップに展開。他人事として評価していたアンケート用紙の裏側に「もしも自分だったら」を書き示すことで、あらためて参加者ひとりひとりが自分自身に向き合う機会となりました。
各セッションを振り返ってみると、それぞれプレゼン手法の違いはあれど、登壇者それぞれが「自分自身を、自分たちらしく」表現しているという点は共通していました。
音楽や映画、落語や歴史などのモチーフと掛け合わせることで、登壇者それぞれのメッセージが新たな表現となり、オリジナリティあふれるプレゼンとなっていく。エンタミナは、多種多様なプレゼンに触れながら、新たな「刺激や発見」を得られる、充実のセミナーイベントでした。
レポート記事:伊藤 淳二
写真撮影:コスガ 聡一
名称 | セミナーイベント『エンタミナ5』 |
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日時 | 2018年1月20日(土) |
場所 | 秋葉原UDXシアター(東京) |
出演者 | 松尾 茂起 益子 貴寛 長谷川 恭久 鷹野 雅弘 中村 健太 坂本 貴史 森田 哲生 高瀬 康次 中川 直樹 田口 真行 |
スタッフ | 木村 香織 金子 夕紀 土田 小百合 八坂 三紀 神田 江美 古堂 あゆ美 川嶋 光太郎 コスガ 聡一 渡邉 泰裕 望月 文博 本間 和城 長谷川 孟也 伊藤 淳二 篠崎 祥子 |
主催 | 株式会社デスクトップワークス |